【解説・ストーリー】
渡世十年泣かずにきたが、笠にうずめたこの顔一つ、涙見せずにいま泣いた。一宿一飯の義理で斬った男の、女房子供と恩愛の旅を行く人生流転…。長谷川伸代表傑作を、加藤泰が、錦之助の至芸と涙と脇差舞わせて描く股旅映画の秀作!
【キャスト】
中村錦之助、池内淳子、渥美清、東千代之介
【スタッフ】
原作:長谷川伸
企画:小川三喜雄、三村敬三
脚本:鈴木尚之、掛札昌裕
撮影:古谷伸
美術:井川徳道
音楽:斉藤一郎
監督:加藤泰
【公開日】1966年4月公開
大利根の流れに浮かぶ下総で、やくざ三人を斬った時次郎。渡世に落ちて十年、仁義の酸いも甘いも身にしみる時次郎は人を斬っては後悔する。一宿一飯の義理ゆえに斬った男の女房子供に追手が掛かると知った時次郎は、二人を庇いながら落ちのびる。
底冷えする信州路、病に臥したおきぬを篤く看病する時次郎だが、想う人は仇と呼ばねばならぬ男。しかしおきぬも苦しんだ。いつしか心が通い始めた春の日に、おきぬは太郎吉を連れて姿を消す。そして一年。高崎で草履を脱いだ時次郎の耳に忘れじの追分節が流れて消えた。その声を追った時次郎は、白い雪に点々と血痰を散らせて、うらぶれ果てたおきぬと太郎吉を見る。
安宿におきぬを寝かせた時次郎は、薬代欲しさに十両で命を売る。八丁徳と聖天一家の大喧嘩に草履を蹴って斬り込む時次郎だが…。(C)東映