小黒 僕らの印象からすると、『幻魔大戦』の時って、金田さんとかなかむら(たかし)さんとか森本さんとか梅津(泰臣)さんが、こう、机並べて仕事してるのかと思っていたんだけど、そんな事は全然ないんですね(笑)。
森本 違いますね(笑)。たかしさんも自宅でやってるはずですし。なかむらさんと一緒に仕事をするようになったのも……あんなぷるでは、劇場版の『ゴルゴ13』が終わって、次に合作の話があったんだよ。でも、俺は合作はやりたくなかった。『ゴルゴ』でも、画がきっちりしてたし、「これが続くと嫌だなあ」って思ってたんだよ。そんなところにいきなり……。ちょうど杉野さんと一緒に飯を食いに行こうとしてたところだったんだけど、たまたまTVで、確か『Gライタン』のなかむらさんがやった「世忘れ村(の怪人)」を流していたんですよ。
小黒 ほおほお。
森本 その中で、懐中電灯がカラカラカラって転がるカットがあってさ。それを観た時に「えっ!? 今何が起こったの」っていうぐらい驚いた(笑)。「なんちゅうアニメがあるんだ」と。それで飯に行かないまま、杉野さんと最後まで観てたんだよ。他の場面も凄かったんだけど、最初に観た、その懐中電灯が転がるカットの印象が凄かった。もうドキドキしてね。それから1週間ぐらいして、友達を介して、たかしさんに「一緒に仕事をやりたいんですけど」って言ったんだ。で、それから、フリーになって今に至る。
小黒 じゃあ、『Gライタン』との出会いで、フリーになったと言ってもいいんですね。
森本 うん。あの「世忘れ村」がなければ多分、もう少しは、あんなぷるにいたかもしれない。
小黒 ちょっと余計な事を訊きますけど、杉野さんは、その時何かおっしゃってました?
森本 「多分、森本は(あんなぷるを出て)行くだろうな」と、そういう感じだったかな(苦笑)。
小黒 『ライタン』を観た時、杉野さんも驚いたんですか?
森本 驚いてました。でも、まあ、杉野さんはそれで揺らぐような事は勿論ないんだよね。出崎さんと杉野さんが作っていく、大きな流れっていうのはしっかりあるわけだから。さっきも言ったように、誰が原画であっても、最低限見られるような演出をしているわけだし。原画マンの優劣で作品が簡単に変になるような作品作りはしていないんだよ。どちらかと言えば、動きよりも、1枚画の「目がものを言う」みたいなスタイル。それに対して、自分はどっちかと言うと、「動いている方が」と思っていた。そんなところに『ライタン』がね……。だから、たかしさんの影響大ですね。
小黒 なかむらさんのどういうところに驚いたんですか?
森本 リアルって言うのか、動きが普通って言うのか……つまり、本物みたいに見えたんだよ。あとね、みんなが言っている、“岩石アニメーター”のところ。それから何本か『Gライタン』を観たんだけど、「岩はどうやって消えていくんだろう」って不思議だった。
小黒 (笑)ああ、砕けた破片はどこへ行くのか、って?
「世忘れ村の怪人」 pic.twitter.com/NECbKHoTXa
— じごくのざりがに (@5050_don) 2019年3月6日