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「狂った果実」を世に放った中平康監督と石原裕次郎のコンビが、今度はスカイ・アクションに挑戦。裕次郎演じる民間航空会社のパイロットは、クリスマス・イヴだというのにセスナで八丈島へのフライトを請け負う。母親の墓参りに行くという男(二谷英明)の依頼だが、実は彼は殺人犯であった。またセスナは破傷風治療のための血清を積んでおり、島の少年の生命がこれにかかっていた。機内には特ダネをものにせんとする女性記者(中原早苗)も乗り込むが、正体のばれた殺人犯は、その銃口をパイロットたちに向ける。
この映画での裕次郎は、例えれば「ダイ・ハード」のジョン・マクレーン刑事だ。クリスマス・イヴに起こるトラブルに偶然巻き込まれてしまうのだが、そこは裕次郎。あくまでカッコよく、あくまで正義感。「狂った果実」とは一転。この映画の裕次郎は眩しいほどのヒューマニズムの持ち主で、屈折のみじんもない快男児ぶりは、ヒーロー裕次郎の面目躍如。全編の6割を占めるセスナ機内での、中原早苗の記者とのやりとりの楽しさ、飛行機操縦の細かな描写から、特殊撮影をも使った迫力あるビジュアル、そして佐藤勝の音楽がテンポの良い展開を盛り立てる。この映画を見ずして裕次郎は語れない。(斉藤守彦)