映像画日記

アニメーターの絵と映画と読書の記録

『老婦人とハト』『ベルヴィル・ランデブー』

ベルヴィル・ランデブー [DVD]

 

Amazonレビュー

   巨大な頭の老女、脚の筋肉だけが異常に発達した青年、ビア樽のように太った犬。特徴が極端に描かれ、一見、気味の悪いキャラクターを、これほどまで魅力的に見せるアニメも珍しい。戦後間もないフランス。マダム・スーザは孫のシャンピオンに自転車の才能があると知り、彼をツール・ド・フランスに出場させる。しかしレース中にシャンピオンは誘拐され、スーザは海を渡り、大都会「ベルヴィル」で孫を捜すのだった。
   全編、ほとんどセリフなし。人物の行動と表情だけでストーリーを伝えるのは、フランス出身のシルヴァン・ショメ監督。あえて手描き風にこだわったノスタルジックな絵や、ちょっぴりグロテスクな描写の数々は、どこか、おとぎ話の世界に迷い込ませるような魔力を持っている。線路脇に建つ傾いた家や、ニューヨークのようなベルヴィルなど、あらゆる背景にも目を奪われる。さらに注目すべきは音楽で、物語のカギとなる三姉妹の老婆が歌うマイナー調のスウィングジャズや、大海原で流れるクラシックなどが強いインパクト。そしてフレッド・アステアジャック・タチへのオマージュ…と、見どころを書いたらキリがない!(斉藤博昭)