映像画日記

アニメーターの絵と映画と読書の記録

今敏の本

PLUS MADHOUSE(プラス マッドハウス) 1 今敏 (キネ旬ムック)

PLUS MADHOUSE(プラス マッドハウス) 1 今敏 (キネ旬ムック)

「+MADHOUSE 今敏」(キネマ旬報社)の中で今敏は、

「黒澤映画は私にとっては特別ですね。黒澤組に関する本とかシナリオ集とか随分読みましたけど、一人の映画作家についてあれこれ読んだのは黒澤明だけです。一つの画面を作るためにここまでやるのか、っていうのは画面をみていてもわかるんだけど、、本を読んであらためて見ると、画面を作るため、少しでも映画を面白く良いものにするためには膨大な積み重ねが必要なんだっていうことが分かってくる。」
と語っている。


初監督作品「パーフェクトブルー」(98)では女優に転進する過程で
で破滅に向かっていくB級アイドルを、続く「千年女優」(01)は日本映画への数々のオマージュに満ちた劇場アニメーション作品であった。
原節子高峰秀子などをモデルとしたキャラクター造形や、小津安二郎を思わせるレイアウトなど今敏の邦画への造詣を特に感じさせる。

千年女優画報

千年女優画報

前述のインタビューの中でも小津や市川昆、川島雄三の作品が印象に残っていると答える今監督は、これらの作品群を集中的に観賞したのは大学在学中からの漫画家活動時だと答えている。
AKIRA」のアシスタントとして大友克洋のスタジオを出入りしていることから、多くのレーザーやビデオを借りていたようである。
大友克洋といえば、「ウッドストック」や「俺たちに明日はない」などに洗礼を受け、アメリカンニューシネマの文法、空気を日本のマンガに持ち込んだ人物である。また同時に今村昌平黒澤明など、映画全般を愛し研究した、邦画監督としての顔もあった。


縁深かったアニメーターの一人である沖浦啓之
「とにかく映画に対する造詣が深くて「黒澤だったらこう、小津だったらこう」みたいな彼なりの見識を持っていた。「パプリカ」でイマジナリーラインの解説をする台詞があるじゃないですか。あんな感じで映画論の基礎みたいなことを惜しみなく聞かせてくれるんです」

と回想する。また本人のHPには亡くなる直前にアニメーターの鈴木美千代と共同で「スタッフのおすすめ映画」のリストを作って公開している。


それは後進のアニメーターに向けた宿題のように感じている。母校の講師も勤め、「とにかく親分肌だった」と語られる今監督の、日本映画の文法、技術の伝承は後の日本アニメーションの演出に大きく影響を残していくはずである。




KON’S TONE?「千年女優」への道

KON’S TONE?「千年女優」への道

井上俊之いわく「クリエイター必読の書ですよ。ものづくりに対してどう臨むべきか、非常によく書かれている本です。」



セラフィム 2億6661万3336の翼(リュウコミックス) [コミック]

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初回版に付録されている「今敏井上俊之沖浦啓之の三人による鼎談(アニメージュの掲載の座談会の再録)」はかなり読む価値が。関係者インタビューもあり、本田雄、板津匡覧、鈴木美千代などの証言が読める。


今 敏アニメ全仕事

今 敏アニメ全仕事

夢みる機械」のスチルやダーレン・アロノフスキーのコメント以外目新しいところはなく、あまり読み応えがない。沖浦氏のインタビューは良かった。



一番言いたいのは「ワールドアパートメントホラー」の復刊の希望。